Tuesday, November 17, 2009

本格的な翌日の競演(3)

 その日は前日に較べれば少し曇ってはいたが、辛うじて晴天と呼べるくらいには晴れていた。しかし実際和男にとってその日が最後の京都滞在日となるべきだったし、また事実翌日からはまた事務所での仕事が待っている。京都で撮った写真を下に作成しなければいけないウェブデザインの仕事が翌朝から待っている。しかしだからこそ休日として最後の時間を有効に過ごしたいと願っていて、思いもかけない体験をしてしまうことになったのだ。
 君子は応接間で大型画面のテレビでニュースを見ている和男と総一郎氏とが寛ぐ前に置かれたテーブルに朝食の味噌汁とご飯と桂川の上流で取れた川魚鮎の塩焼きを運んできた。それを総一郎氏は「今日が京都で最後に日なんですから、どうぞ遠慮なしにお召し上がり下さいな」と言って勧めた。昨日は少し飲み過ぎたとも思ったが、思わぬおまけがついていたので、そんなこともすっかり忘れていたが、多少昨日の後から運ばれてきた日本酒の匂いが未だ口元に残っていたし、多少後頭部に二日酔いの兆候が確かめられた。
 君子は二人に食事を運ぶと台所に引っ込んだ。結局和男はニュースを見ながら
 「例の殺人犯どうなったでしょうね」などと言いながら、数週間くらい前に殺害された女性代性の遺体発見という痛ましい事件の犯人に対して言及したりして、それに適当に合わせて和男は応対していた。
「いやあ、こういう事件に巻き込まれるということ自体がもう運命としか言いようがないですな」
と総一郎氏が言うと和男は
「そうですね、ご両親はいたたまれないでしょうね」
と返した。しかしこの夫婦には子どもはいないのだろうか?いつ結婚したかということも知らないし、サーカスの団員だったこの総一郎氏が不慮の事故で下半身不随になった時には既に結婚していた、ということしか和男は知らされていなかった。又向こうからそういうことを自発的に告白しでもしない限りそういうプライヴェートなことまでこういう形でお暇している時に尋ねるものではないと和男は一切何も自分からは質問しはしなかった。
 そんなことよりも君子の中にある真意の方がその時の和男にとっては問題だった。
「奥さんは何をなさっているんですか?」
と和男がニュースを見ながら楽しそうに和男に語りかけていた時ふと質問すると総一郎氏は
「いや、今日あなたがお帰りになるわけだから、最後に午前中にここら辺を車で散策してみようということで、昼食を用意しているみたいですよ」
と言った。すると畏まって和男が
「いやあ、昼食までご厄介になるなんて恐縮致します」
と言うと総一郎氏は
「まあ、あなたがもっと早くご帰宅されたいと仰るのであれば、昼食時まで付き合って頂けなくても構いませんですけれどね」
と言った。すると和男は
「そうですね、私もそろそろ帰り支度をしなければね」
と言った。尤も一眼レフのデジカメを仕舞い込んだショルダーバッグだけを持ち帰るだけのことだが、新幹線の切符を京都駅で直接買うわけだが、休日なので早めに駅に行ってその日のチケットを買わねばならない。たまたまその時は往路のチケットだけを直接東京駅で買ったからこうして一泊していたが、復路のチケットまで買っていたのなら、そうはしなかっただろう。従って君子からの誘いを受けたということは一つの運命だったのかも知れない、とそう和男はその時思った。

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