Tuesday, October 20, 2009

萱場総一郎氏との出会い(3)

 和男は萱場氏の車に再び乗り込んで、彼の自宅へと向かって萱橋氏の運転で助手席に乗って、車の外が10月なのに異様に暑かったということを後日想起するだろうとそう思った。確かに地球は温暖化している。冷夏であり暖冬であるような一年の季節感を狂わせるこの地球上の気候の変化に、しかしいつまでもそれが異常だと思っていても仕方ないとそう近頃では和男は思っていた。
 萱場氏は色々と裏道を知っているので、比較的早く十分足らずで東山の銀閣寺の裏手にある萱橋氏の邸宅に到着した。山の中腹にある見た目なこじんまりした邸宅は、しかし萱場氏の誘いで玄関の中に入った時意外と広いということが分かった。玄関で出迎えてくれたのは萱橋氏の妻である君子だった。「妻の君子です」と氏が紹介してくれたのだ。最初に目にした時君子は六十代後半であろうと思われる萱橋氏よりは少なくとも二周りは年少であると思われた。未だ三十代前半のように見えた。せいぜい菊池真理や茜よりは少し年長だろうけれど、君子は少なくとも昨日会った幸恵や杏子よりは明らかに若かった。
 菊池真理は長い髪の毛をしているが、茜はショートカットだ。しかし君子は中くらいに髪の毛を伸ばしていたが、胸だけは真理や茜よりも立派だった。腰つきもしっかりとした体格である。茜はスレンダーで、菊池真理は体格は比較的着やせはするものの、ふくよかそうだった。和男はここのところ自分の周囲に代わる代わる登場する女性たちを色々な角度から脳裏で値踏みしていた。
「どうぞお上がり下さいませ」
と言って君子は靴を脱ぐように促し、玄関に上がっていこうとする和男を応接間へと導いた。萱橋氏は玄関脇に設えられているスロープを電動車椅子を走らせた。そして庭先に面した廊下を行き、右にある応接間へと入って行き、自分で車椅子から降りてソファに寛ぎながら、「どうぞ、そちらにお座り下さい」と言って和男が座るように促した。
 君子は萱場氏の隣に座った。そして萱場氏は庭の方を指差して
「どうです?ここからだと平安神宮も南禅寺も京都御苑も見渡せた。またソファに座って眺めると丁度いいヴューとなるのだった。
「なかなかここからの眺めは絶景ですね」
と和男は言ったが、それは勿論世辞ではなかった。本当に素晴らしい眺めなのである。

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